Vol.18 猟師の肉は腐らない


脇道堂書店 〜わたしの一冊〜編集者/柏子見

脇道堂書店_横長タイトル

数年前から仕事を通して「食」に興味を持ち始め、魚の捌き方を習いに料理教室に通ったり、休みの日に気が向いたら夕食を作ったり、方々へご当地モノを食べに出かけることもしばしば。そんな私が興味をそそられたのが、この本でした。『猟師の肉は腐らない』。

猟師の肉は腐らない/小泉 武夫 (著)

半年ほど前、よく行く紀伊國屋書店で偶然このタイトルを目にして読みたい衝動に駆られて即購入。著者は東京農業大学の教授で食品発酵を専門とする方でメディアにも時々出演している小泉武夫さん。装丁が素朴な親しみのあるイラストなので猟師の肉が腐らない理由をわかりやすく、それ相応の専門的な内容で解説してくれるだろうと期待した。

ところが、中身は専門書でなく、フィクション小説。福島の阿武隈の山奥で暮らす猟師の話で、猪の狩猟や岩魚の捕り方、調理や保存の仕方、冬に備えた知恵など山奥のサバイバル生活が物語風に流れていく。冷蔵庫も暖房器具もなくパソコンやスマホもない文明社会から離れて暮らす猟師の生き方は面白いし、社会に流されず自分流を貫く生き方は少しカッコよさも感じるが、憧れは全く無い。

自然は時どき風景に眺めて野山を散策するぐらいが、ちょうどいい。50歳も半ば過ぎると、体のあちこちにガタが来て、サバイバル生活なんてとんでもない。ましてや親の介護や定年後の事をちらほらと考えざるを得なくなるし、家庭があれば、なおさら自分流なんていう身勝手な事も出来ない。“猟師の肉がなぜ腐らないか”を知りたいだけだったのに、そんな人生観までも無理やり考えてさせられてしまった一冊だった。

そういえば、私の実家のある愛知県瀬戸市の山林地域で、最近、猪や猿が頻繁に出没するらしく、昨年は猪が10頭近く捕獲されたとのこと。すぐに捌いて、ぼたん鍋にでもして食したら、新鮮だからさぞかし美味しいだろう。

ちなみに、猟師の肉が腐らないのは“灰燻し”という方法らしい。土の地面に穴を掘ってその中に枯葉や生葉を敷き詰めて生肉を載せ、さらに枯葉を被せて火を付けて、火の勢いを調整しながら燻す。燻し終わったら、獣の口や肛門などに灰を詰めれば長期保存でも腐るのを防ぐようだ。

2017.11.8
高橋 豊

公開日/2017年11月08日



関連記事