05 雲のまにまに


脇道堂書店 〜わたしの一冊〜編集者/柏子見

脇道堂書店_横長タイトル

羊が一匹、羊が二匹…。
そんなおまじないに頼った事のある方も
多くいらっしゃるのではないでしょうか。
その一人である私、第三弾を担当されていた久松愛さん同様
新卒のデザイナー、松井歩美です。

雲のまにまに | ヤナキ ヒロシ

今回私がご紹介する一冊は、
前述のように夢見心地に羊を数えるとき、
一般的な地の白い羊ではなく、
地の黒い羊が脳内を馳け廻るようになった事に起因する
「雲のまにまに」という絵本です。

ねえ、ウージーっていう羊さんのオハナシなんてどう?
ぼくの古い友達なんだけど、
ウージーの日記があるからそれを読もっか

出会いは私が小学校低学年の頃でしょうか…。
読書よりグラウンドで遊ぶ事を好んでいた私が初めて父におねだりした一冊です。
物語は登場キャラクター「ウージー」によって綴られた日記に従って進行していきます。
簡潔な線で描かれた挿絵に、淡々とした描写、
反して、どこか穏やかに感じられる不思議な雰囲気。
幼い私はその全てが魅力的に思えて、瞬く間に心をぎゅっと鷲掴まれてしまいました。
彼と同じように小首を傾げて、時には笑い、涙もほろり…。
そこには下腹部が熱くなる程の情熱的な展開はなく、
脳をガツンと揺さぶられるような衝撃もありません。
ひたすら平坦に、ゆっくりと時が流れていく。
それを読者として見守るのが、酷く切なかった事を覚えています。

絵本とは情操教育の一環で読む物である。という事を考慮しても、
物語性を思えば”教訓”という堅く小難しい形では表現し難く、
この本からこれを学び、こう活かします!と明記する事は
実力不足故、残念ながら叶いません。
けれど、今読み返すと幼少期のアルバムを捲るような、
こっ恥ずかしさと、愛おしい気持ちに包み込まれてしまうのですから、
やはり松井歩美の一冊といえば、これに尽きるのでしょう。

胸中をほんわかと暖かくして、ちょっぴり寂しさも傍にある。
そんな素敵な絵本の魅力が私の感情を通して少しでもお伝え出来たでしょうか?
これを機に本書を手に取ってくださった方がユニークな友人と出会い、
ふとした瞬間に空を眺めたくなってしまうような思い出を手に出来る事を願うばかりです。

2017.7.26
松井 歩美

公開日/2017年07月26日



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